李嘉一さん(大学院1年)が、第47回日本分子生物学会年会で、AlphaFold2のモデル構造と天然構造上のタンパク質間相互作用部位の構造比較に関する研究のポスター発表を行いました。
【研究概要】
AlphaFold2はタンパク質の構造予測に著しい進歩を与え,分子機能の解明に向けた幅広い研究分野において重要なツールとなっている.特に、タンパク質間の相互作用や複合体構造の解明に向けた研究において,AlphaFold2によって予測されたモデル構造は重要な役割を果たすことが期待される.一方,相同なタンパク質の立体構造が未だ実験的に明らかにされてないようなタンパク質に対して,AlphaFold2は十分な性能を発揮することができない可能性がある.そのような場合,全体的な構造の予測は困難であっても,機能的に重要な相互作用部位の構造がどの程度正確に予測されているか,十分に解析されていない.そこで本研究では,AlphaFold2の学習データに含まれていないタンパク質のモデル構造の信頼性,特にタンパク質間相互作用部位の構造に注目して,AlphaFold2によって予測されたその局所的な構造の信頼性について検証する.そのために,学習データに含まれていない実験由来のタンパク質間相互作用部位の天然構造と,AlphaFold2で予測されたそのモデル構造を比較した.また,Protein Data Bankの機能分類に基づき分類されたタンパク質ごとに同様の比較を行った.結果として,AlphaFold2の学習データに含まれるタンパク質との相同性が30%未満のタンパク質に対して,AlphaFold2のモデル構造の全体的な構造の予測精度が低い場合であっても,タンパク質間相互作用部位の構造は比較的に精度良く予測されている,すなわち天然構造のその局所的な構造とのRMSDが3.0Å以下であることが確認できた.この結果は,タンパク質間相互作用部位予測へのAlphaFold2の活用の有効性を示唆するものであると考えられる.